- 環境省は「再生可能エネルギー4分野を大きく伸ばすための戦略」を取りまとめた。その中で、「2030年時点で原発ゼロ」を選択した場合の対応として、総発電量の約10%を再生可能エネルギー4分野でまかなうため、潜在力が最も高い「洋上風力発電」を2030年に原発約8基分にあたる803万kWに伸ばす目標などを設定したとされている。
- 原子力発電所の出力は1基で約100万kWなので、それで803万kWを割って「原発約8機分」と解釈したと想像される(環境省がそのとおり発表したのか、マスコミがそう解釈を加えて発表したのか確認していないが)。
- このような「解説」を読むと、原子力発電所8基を洋上風力発電で代替できるように解釈したくなるが、「出力」と「発電量」が比例しないため、その解釈はもちろん正しくない。具体的には、風力発電と原子力発電では設備利用率に大きな差があることが決定的に重要な問題である。
- 原子力発電は定期点検などを除けばフル稼働が可能で、実際の設備利用率も80%程度らしい。しかし、風力発電は「風が吹かないと発電しない」ことが決定的に深刻な問題で、設備利用率は20%程度とされている(洋上風力発電に限っても大差ないと推定される)。
- 要するに、「出力」と「発電量」では数倍の差が生じるため、両者の差を無視して一緒くたに論じるべきではない。したがって、このような解説は誤解を与えやすく、不適当なものだろう(設備利用率の差について、意図的に言及しなかったのか、本当に分かっていなかったのか不明だが)。
- とはいえ、洋上風力発電などの再生可能エネルギーの価値を否定するつもりは毛頭ないので、「エネルギー政策はこうあるべき」という話と「データをこう解釈すべき」という話は区別して考えたい。
- 個人的には再生可能エネルギーに大きな期待を寄せているが、非科学的な解釈に基づいてバラ色の将来像を描くことも戒めるべきだと考えている。