複数の意味で解釈される可能性がある表現は避けよう

日本と北朝鮮は政府間交渉の再開に向けた予備協議を開き(H24.8)、局長級による政府間交渉が来月(H24.9)にも開催されることになったそうだ。どんな議題で交渉を再開するかが焦点だったが、「双方が関心を有する事項を議題に幅広く協議する」ということで合意したらしい。しかし、拉致問題が議題として取り上げられるかどうかは、合意事項の「解釈」に依存しているとされている。

  • このような重要な問題でも「解釈の違い」が存在し得ることを関係者が直ちに認めるようでは、合意した意義がどの程度のものか疑問を感じる。
  • このような表現では、以下のどちらを意味しているのか区別ができないからである。
  1. 双方が共に関心を有する事項を議題に幅広く協議する。
  2. 双方がそれぞれ関心を有する事項を議題に幅広く協議する。
  • 後者の意味なら拉致問題が議題になるのは確定的だが、北朝鮮が前者の意味で合意したと主張すれば、拉致問題を議題とすることを拒否できることになる。このような国家同士の合意事項が「同床異夢」では困る。
  • 複数の意味で解釈される可能性があることを暗黙の了解として、意図的にそのような表現で合意したのであれば、それを「交渉術の一つ」と表現することも可能だが、「問題の先送り」と表現するほうが普通だろう。
  • 政治の世界の駆け引きはともかくとして、例えば私が携わっている調査研究業務の成果物としてこんな玉虫色の表現が使われるようでは困る。ものごとを論理的に考える習慣があれば、こんな表現は不適当だと気がつくはずなのだが、現実はそうでもないのが悲しい。

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